宿泊業、地域経済に影響力 観光庁調査で判明


 旅館・ホテルは地域経済に強い影響力を持つ—。観光庁は17日、観光地域経済調査の結果(2013年確定値)を発表した。地域における観光関連業種の観光客の売上高や費用に関する金の動きなどが把握できる調査で、14年度に初めて本格実施された。宿泊業は、材料やサービスの地元調達率が約5割に達し、他の業種より高いことから、地域経済への波及効果が大きい業種であることなどが裏付けられた。

 入込客数などの要件を満たす観光地域5861カ所を選定。この地域で営業する宿泊業、飲食業、小売業、旅客輸送業など観光客に商品を販売したり、サービスを提供したりする約104万事業所の実態を推計。調査対象は観光地域約900カ所の約9万事業所。

 事業所が各種の材料やサービスをどこから仕入れているかが把握できる「仕入・材料」「外注」の調達先(費用の支払い先)の比率は、事業所が所在する「市区町村内」が19.4%、「(所在市区町村以外の)都道府県内」が37.0%、「他の都道府県」が38・3%などだった。

 宿泊業の調達先を見ると、「市区町村内」が51.7%に達している。他の主な業種の「市区町村内」の比率は、飲食業が39.2%、旅客輸送業が33.0%、小売業が14.8%。地元調達率が高い業種ほど、観光客が落とす金を多く地域内に還流させていることになり、宿泊業が観光地域の経済に重要な位置を占めることが分かる。

 さらに宿泊業が「市区町村内」で調達する材料やサービスの項目別の比率を見ると、農林水産物が最多で37.4%、加工食品・調味料が14.4%、清掃・洗濯サービスが12.6%、飲料が10.5%、人材派遣サービスが7.3%など。宿泊業は、地元の農林水産業や食品加工業との結び付きが強いことも分かる。

 この他にも観光地域経済調査では、地域内の事業所の売上高のうち、観光客からの売り上げが占める割合が把握できる。今回の結果では対象業種の平均は17.5%。業種別では宿泊業が63.8%、旅客輸送業が34.0%、飲食業が12.2%、小売業が5.5%など。

 各業種の売上高に占める観光客の割合から分かるのは地域観光の現状。例えば、宿泊業で極端に高く、飲食業や小売業で極端に低ければ、観光客の多くは宿泊施設内で飲食し、土産品を買うが、地域内の飲食店や土産店を利用する機会は少ないという実態を表している可能性がある。

 観光地域経済調査の特徴は、(1)「観光」という切り口で事業所のデータ(売上高に占める観光の割合、雇用など)の把握が可能(2)行政単位ではなく、「観光地域」という切り口で地域のデータ把握が可能(3)売り上げ、費用など資金の「動き」を域内外別に直接把握できる。観光庁では「観光による地方創生に向けた基礎資料として活用できる」としている。

 観光庁は、調査結果の全国集計表と、調査票の回収率が高く統計精度の高い91地域の集計表を同庁ホームページで公表する。観光地域経済調査は、総務省の「経済センサス」に合わせて5年ごとに実施することが検討されている。

 
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